カテゴリ: フランス

プレイヤード叢書(La Bibliothèque de la Pléiade)をご存知だろうか。フランス・ガリマール出版社から刊行されている革製本が特徴的な文芸シリーズだ。

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「フランス装」と呼ばれる粗末なペーパーバックの書籍がほとんどのフランスには珍しく、プレイヤード叢書は革装本に函入りという凝りようだ。フランスでは購入したペーパーバック本を製本店に頼んで自前で製本する文化があるが、かつて革製本は裕福な上流階級にのみ許される贅沢だった。そこでプレイヤード叢書はあらかじめ製本したものを大量に流通させることで価格を抑え、それまで革装本に手の届かなかった中流階級でも何とか買えるようにしたのである。

使用されている紙は聖書用紙と呼ばれるもので、薄くて丈夫なつくりをしている。そのため価格も高めで、1冊5千円以上する。1~2千円台で本が買えるフランスには異例のことである。

手が込んでいるのは装丁だけではない。本文も当代一流の研究者によって校定が行われたもので、注釈や解説も充実している。そのため文学や哲学の研究者の間では資料としてプレイヤード版を使うのが習わしとなっているジャンルもある。

プレイヤード版で取り上げられるのはフランス人だけではなく世界各国の作家が翻訳され、日本人では谷崎潤一郎が唯一収録されている。

書店でプレイヤード叢書を同時に3冊買うと特製アルバムがその場で贈呈される。アルバムは作家の生涯にまつわる写真がセレクトされたもので、毎年新しいバージョンに更新される。アルバムの歴史は1962年のバルザックに始まり、2014年はマルグリット・デュラスが取り上げられた。人気の作家のアルバムは高価で取り引きされている。

ちなみに本文に使用されているフォントは「Garamond(ギャラモン)」という。フランスでは歴史的に使用されてきた高級感のある書体で、かつてapple社のロゴにも使用されていたこともある。細部のデザインまで手の込んだプレイヤード叢書、日本国内では洋書専門店などで手に入るので、興味を持った読者は一冊手に取ってみてはいかがだろうか。


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まずはこちらのバッグをご覧いただきたい。一見何の変哲もないおしゃれなバッグだが…
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実はこれ、なんと旅客機の救命胴衣をリサイクルして作ったバッグなのだ! 

このバッグはフランスの航空会社エールフランスが2012年に製作したもの。旅客機の救命胴衣は安全のため常に最新のものにアップデートする規定となっているので、機材更新のたびに大量の廃棄品が出てしまう。そこで会社が目を付けたのが「bilum」というブランドだ。このブランドは様々な廃材を再利用して鞄やポーチなどのアイテムを製作しており、フランスで人気のブランドなのだそうだ。
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bilumブランドは救命胴衣の他にも色々な素材を再利用している。特別展の会期が終わったら不要となってしまう美術館のポスターも、bilumの手にかかればこの通り。スタイリッシュなバッグに早変わりだ。
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なおbilumは障がい者の雇用にも積極的なメーカー。製品は一つひとつ手作りなため、同じ製品は二つとしてないという。公式webサイトではミニポーチが19ユーロから販売されているので、気になった読者はチェックしてみては?

source: bilum.fr 

フランスでクレジットカードは日本以上にありふれたものだ。ブティックやレストランはもちろん、スーパーの支払いなどでも日常的に使用される。財布から小銭を出す手間が省けるし、それに安全だ。何しろ今やパリは世界有数の犯罪都市なのだ。スリや強盗があなたの財布を狙っている。これから観光でパリを訪れるという読者も多額の現金を持ち歩くのはやめた方が良い。AMEXは使えないことが多いのでVISAかMaster Cardの携行をおすすめする。

そんな事情なので、フランスの銀行は各社手の込んだデザインのクレジットカードを多く発行している。中でも目を引くのが大手金融機関「ソシエテ・ジェネラル」で採用されているカードである。

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ご覧の通り、カード一面にNARUTOのキャラクターがデザインされている。フランスでは日本のサブカルチャーが人気を博しており、多くの書店に少年マンガの翻訳が並ぶほか、JAPAN EXPOと呼ばれる日本文化の博覧会も毎年開催されている。7月上旬に開催される今年のJAPAN EXPOにはベリーズ工房などのアーティストが招待されている。フランスにおける潜在的な日本人気は根強いものがあり、アニメイラストのカードにもそれなりの需要が見込めるのだろう。NARUTO好きの読者はこの機会に口座開設してみては?

ソシエテ・ジェネラルとは

ソシエテ・ジェネラル(Société Générale)はフランスの大手金融機関。国内シェアは最大手のクレディ・アグリコルに次いで第2位。1864年、ロスチャイルド家などの資本を元手に創業され、今年(2014年)で創業150周年を迎えた。現在は世界80か国以上に進出し、3千万人以上の顧客を有する。



旅行先でワインを買ったけどオープナーがない!そんな経験をした方は少なくないはず。ナイフで無理矢理こじ開ける、コルクを親指でボトルの中に落とし込むなどの方法を試した方もいるでしょう。

今回紹介するのはワインオープナーを使わず簡単にコルクが抜けるという革命的な方法です。あまりの鮮やかさに思わず目を疑いますが、覚えておけばどこかで使う機会があるかも…?




昨日、フランスの大学入試であるバカロレアの哲学試験が実施された。文系・理系・経済社会系の3種類のうち、これまで文系理系の問題を取り上げてきたが、最後となる本記事では経済社会系の問題を見てみよう。


テーマ1:自由であるためには選択するだけで十分なのか?
(Suffit-il d'avoir le choix pour être libre ?) 

テーマ2:なぜ自分のことを知ろうとするのか?
(Pourquoi chercher à se connaître soi-même ?) 

テーマ3:以下のハンナ・アレント『人間の条件』(1958年)の抜粋を説明せよ。(略)
(explication de texte : Hannah Arendt, Condition de l’homme moderne, 1958)
 
 
いかがだろうか。どれも大人でも悩みこんでしまいそうな問題ばかりだ。とはいえ、このような答えのない問題を本気で―4時間かけて―考えるというのは受験生本人にとっていい経験になるだろう。パスカルやサルトルを生んだ国だけあって、哲学の効用を実感させられる試験だ。

なお、バカロレア試験は今月23日まで、6日間にわたって行われる。

昨日、フランスの大学入試であるバカロレアの哲学試験が実施された。文系・理系・経済社会系の3種類のうち、前の記事では文系の問題を取り上げたが、今度は理系の問題を見てみよう。文系と同様、3つのテーマから1題を選択して論述する形式だ。


テーマ1:人は幸せになるために生きるのか?
(Vivons-nous pour être heureux ?) 

テーマ2:芸術家は自分の作品の主なのか?
(L'artiste est-il maître de son œuvre ?) 

テーマ3:以下のルネ・デカルト『精神指導の規則』(1628年)の抜粋を説明せよ。(略)
(explication de texte : René Descartes, Règles pour la direction de l’esprit, 1628)
 

いかがだろうか。文系と同様、難易度の高さに驚かされたのではないだろうか。何より高校生にデカルトを読ませるという出題者の心意気に感心させられる。

最後に次の記事では、 経済社会系の問題を見てみよう。

【文系の問題はこちら】

昨日よりおよそ1週間にわたって、フランスでバカロレア試験が実施される。バカロレアとはフランスの大学入試のこと。日本の大学入試と違い、合格点をとれば原則どの大学にも行けるシステムとなっている。フランスは大学入学の季節が秋なので、この時期に入学試験が行われるのだ。

初日は例年通り哲学の試験。3つのテーマから1題を選択し、4時間にわたって論述する形式だ。一体どんな問題が出題されるのだろうか。さっそく問題文を見てみよう。


テーマ1:芸術作品は知覚を育むか?
(Les œuvres d'art éduquent-elles notre perception ?)

テーマ2:幸せになるためならなんでもすべきか?
(Doit-on tout faire pour être heureux ?)

テーマ3:以下のカール・ポパー『客観的知識』(1972年)の抜粋を説明せよ。(略)
(explication de texte : Karl Popper, La Connaissance objective, 1972)
 

いかがだろうか。暗記中心の日本の入試問題とは随分雰囲気が異なるが、一読して難易度の高さに驚いたという読者も多いだろう。

ちなみにこれは文系用の問題。バカロレアは他に理系用と経済社会系用の問題もある。次の記事では理系の問題を見てみよう。 

【経済社会系の問題はこちら】 

フランスと聞いたとき第一に何を連想するでしょうか? 「美食」「ファッション」「音楽」など様々だと思います。しかしフランスといえば何といっても「芸術」は外せません。パリにはそんなフランスの誇る芸術作品を展示する美術館が数多く存在します。今回はそんなパリにある美術館の中から10館を厳選して紹介します。これから旅行へ出かける方の参考になれば幸いです。なお、写真は筆者がパリを旅行した際に撮影したものです。

1. ルーヴル美術館

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パリの観光地といえばエッフェル塔や凱旋門と並んで、まずこの美術館が思い浮かぶのではないでしょうか? ルーヴルは世界で最も有名な美術館の一つであり、『ミロのヴィーナス』やダヴィンチの『モナリザ』などの名画や彫刻が所狭しと並んでいます。収蔵品数30万点以上、床面積は60,000平米と非常に広大で、じっくり見ようと思ったら一日ではとても足りません。

2. オルセー美術館

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パリで2番目に有名な美術館といえばここオルセー美術館。ルーヴル美術館が古代から19世紀までの作品を扱っているのに対し、このオルセー美術館は二月革命(1848)から第一次世界大戦(1914)までの作品を展示しています。折しも印象派全盛の時代、モネやミレーなど誰もが知る印象派の巨匠による作品が一堂に会するさまは圧巻です。ちなみに趣のある建物はかつての駅舎を改装したもの。吹き抜けの空間やかつて電車の発着を知らせた大時計やは独特の雰囲気を醸し出しています。訪れた際はそういった点も意識してみるとより深く楽しめるでしょう。

3. オランジュリー美術館

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規模こそルーヴルやオルセーには敵わないものの、収蔵品の豪華さでは前2者に引けを取らない美術館です。「オランジュリー(Orangerie)」とは、「オランジーナ(Orangina)」からも連想されるとおりオレンジに関連する単語で、オレンジ用の温室を意味します。もともとは皇帝ナポレオン3世が宮廷用のオレンジ温室として19世紀中頃に作らせた建物ですが、20世紀前半に美術館へリノベーションされました。その目的はクロード・モネの連作『睡蓮』を展示すること。かつて温室だったこともあり絶妙な採光の下、白い壁面に名画が並ぶさまは圧巻です。

4. 国立近代美術館(ポンピドゥー・センター)

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パリに似つかわしくない機械的で武骨な建物が目を引くポンピドゥー・センター、その4・5階にあるのが国立近代美術館です。作家にしてド・ゴール政権の文相でもあったアンドレ・マルローが計画した美術館で、20世紀の美術品を収蔵する目的で作られました。世界的建築家のレンゾ・ピアノとリチャード・ロジャースが設計した建物の名前は共和国第2代大統領ジョルジュ・ポンピドゥーに因んだものです。展示はキュビズムや野獣派の作品から若手芸術家の特別展までバラエティ豊かなので、現代アート好きならきっと楽しめるでしょう。ちなみに美術館の位置するレ・アル地区は若者の遊び場なので治安が良くない地区として知られています。貴重品の管理には十分気をつけて下さい。

5. カルナヴァレ美術館

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ルーヴルやオルセーといった名だたる美術館に押されて知名度は低いものの、訪れた際の満足度はピカ一、そんな隠れた穴場がこのカルナヴァレ美術館です。またの名を「パリ歴史博物館」といい、歴史に関する美術品を多数展示しています。特にフランス革命のコーナーは、人権宣言やバスティーユ襲撃場面などの教科書で見たような絵画が数多く並んでおり、歴史好き、「ベルばら」好きならきっと満足できるでしょう。入館料が無料なのも嬉しい点です。

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