オーストラリア・シドニーにオープンしたフランク・ゲーリーの新作が、早くも話題を呼んでいる。
フランク・ゲーリー(1929年~)はカナダ・トロント出身の建築家。現在はアメリカ合衆国に拠点を置く。コンピュータのCADシステムを駆使して構造設計を行い、「MIT ステイタ・センター」(下写真)や「ビルバオ・グッゲンハイム美術館」などといった脱構築主義的な建築スタイルで世界的に高い評価を得ている。
そんなフランク・ゲーリーの新作が、記事冒頭に掲載した写真である。くしゃくしゃに丸めた紙袋を思わせる複雑な外形は、内部空間が表面に現れ出たものだという。まさにゲーリーの真骨頂と言えよう。
ちなみにこの外壁を構成するのは、32万個もの特製レンガである。一個一個手作業ではめ込んだというから驚かされる。有機的なデザインは生きた樹木を利用したツリーハウスにヒントを得たもの。砂状の色合いは現地シドニーの歴史的建造物に取材したという。
この世界的にも類を見ない独特な建物は、オーストラリア・シドニー工科大学内のビジネススクールに2015年2月オープンした「ドクター・チャウ・チャク・ウィング」(Dr Chau Chak Wing)という。12階建てで、総工費は1億8千万豪ドル。オーストラリア初のゲーリー建築である。現代のビジネス教育にふさわしいクリエイティブな建築が求められた結果、ゲーリーに白羽の矢が立ったという。
なお「チャウ・チャク博士」とは、ビル着工に際して2千万豪ドルを寄付した中国系ビジネスマンの名前である。
なお「ドクター・チャウ・チャク・ウィング」は地域社会に開かれた建築を志向しており、企業関係のイベントにも使用されるという。興味を持ったという読者はシドニー工科大学の公式webサイトから情報を得ることができる。オーストラリア観光の際は旅程に組み入れてみてはいかがだろうか。
photo: hexapolis.com