本日3/20のGoogleロゴはセンメルヴェイス・イグナーツのアニメーションになっている。
センメルヴェイス・イグナーツ(1818-1865)は19世紀ハンガリーで活動した医師。手洗いによる殺菌の効果を世界に先駆けて学会に発表した人物だ。1847年の今日3月30日、センメルヴェイス・イグナーツはウィーン総合病院の産科クリニックのチーフレジデントに任命され、医師たちに対し手洗いの励行を推奨した。
今でこそ手洗いが大きな消毒効果を持つことは常識だが、19世紀当時、そんな単純な動作で殺菌が可能という説は多くの医学者にとって懐疑的に思われた。オーストリア帝国の首都ウィーンで流行した産褥熱――当時の分娩時の死亡率はなんと20パーセントにも上った――に対し手洗いの励行を訴えたセンメルヴェイス・イグナーツに対し、当時の医学界は嘲笑を持って迎えたという。衛生観念が未発達だった19世紀ヨーロッパにおいて、感染症の原因は「瘴気」(よどんだ空気)であるとされ、細菌やウイルスといった微生物の存在はまだ認知が進んでいなかったのだ。
センメルヴェイス・イグナーツの提唱した「手洗い」は――当然のことながら――臨床において大きな成果を上げたが、彼の功績が学会で認められることはなかった。「諸国民の春」と呼ばれる1848年革命の混乱と相まって、センメルヴェイス・イグナーツは1850年にウィーン総合病院を失職する。以後、故郷のハンガリーへ戻り、ブダペストで臨床に当たったセンメルヴェイス・イグナーツだったが、周囲の無理解に直面し、次第に神経衰弱に陥る。1865年8月13日、センメルヴェイス・イグナーツは精神病院で47歳の短い生涯を終えた。
その後、ルイ・パスツールやロベルト・コッホら生化学者が微生物学を確立し、感染症の原因が細菌やウイルスであったことが判明すると、センメルヴェイス・イグナーツの評価も次第に高まっていくこととなる。今日のGoogleロゴもそんな彼の業績を称えるもので、また正しい手洗いの方法を紹介するものとなっている。Googleの特設ページには手洗いの方法が描かれたチャートも掲載されている。印刷もできるようになっているので、この機会によく読んで手洗いの励行を心がけたいところだ。