今日はベルリンの壁崩壊30周年という歴史的な日だ。Googleトップページもこれを記念して特別ロゴに変更されている。
このベルリンの壁崩壊をモチーフにしたイラストを担当したのはベルリン在住のアーティストMax Guther氏。崩壊した壁の間から抱き合う東西ベルリンの市民を描いている。
ベルリンの壁崩壊は1989年11月9日に突如として起こった。かねてよりソ連のゴルバチョフ第一書記による改革路線(перестройка)やポーランドにおける自主管理労組「連帯」(Solidarność)の結成などを契機とした東西融和ムードが高まっていたが、この日、東ドイツ政府は自国民の海外渡航規制を緩和。これを事実上の東西通行自由化と解釈した市民は国境地帯に殺到し、ベルリンの壁崩壊という歴史的事件を招いた。
なお、ベルリンの壁崩壊を思想的に準備した作品にヴィム・ヴェンダース監督の映画「ベルリン、天使の詩」(1987)がある。脚本は2019年にノーベル文学賞を受賞したペーター・ハントケ。「ヒトラー最期の12日間」で主演を務めたブルーノ・ガンツがこの作品では人間を見守る天使ダミエルの役を演じており、彼が踊り子マリオンに出会い、人間界に降りてくる決心をする物語だ。
実はこの天使ダミエルは監督の意図ではヴァルター・ベンヤミンの歴史哲学テーゼにおける「歴史の天使」の寓意であり、後ろを振り返りながら敗者たちの過去を見守る歴史そのものを擬人化した存在である。
そんな歴史の天使ダミエルに対しヒロイン役のマリオンは「運命に身を任せるのではなく決断すること」を促す。このメッセージはベルリン市民の意識に影響し、2年後のベルリンの壁崩壊を招いた。興味を持った方は鑑賞してみてはいかがだろうか。