フランスで6月18日、バカロレア資格の初日として哲学試験が実施された。
バカロレア資格とは?
バカロレア資格とはフランスの大学入試にあたる検定試験のこと。受験生は一週間に渡ってこの試験に取り組み、合格すれば原則としてどの大学にも入学する権利を得られる点が特徴だ。ただし近年ではバカロレアの制度改革が進められており、その是非をめぐって連日デモが行われるなど、フランス中で熱い話題となっている。そんなバカロレア資格、初日の午前に行われる試験は例年通り哲学だ。3つのテーマから1題を選択し、4時間に渡って論述する試験形式である。日本のセンター試験とは大分雰囲気が異なるが、一体どんな試験なのだろうか。早速今年の試験問題を見てみよう。
バカロレア試験問題(文系)
テーマ1:文化は人を人間的にするか。(La culture nous rend-elle plus humain ?)
テーマ2:真理は放棄し得るか。
(Peut-on renoncer à la vérité ?)
テーマ3:以下のアルトゥル・ショーペンハウアー『意志と表象としての世界』の抜粋を説明せよ。(問題文略)
(explication de texte de Arthur Schopenhauer, "Le monde comme volonté et comme représentation")
バカロレア試験問題(理系)
テーマ1:欲望とは人間の欠陥の証か。(Le désir est-il la marque de notre imperfection ?)
テーマ2:正を知るためには不正の経験が必要か。
(Eprouver l'injustice, est-ce nécessaire pour savoir ce qui est juste ?)
テーマ3:以下のジョン・スチュアート・ミル『論理学体系』の抜粋を説明せよ。(問題文略)
(explication de texte de John Stuart Mill, "Système de logique")
バカロレア試験問題(経済・社会系)
テーマ1:真理は不変か。(Toute vérité est-elle définitive ?)
テーマ2:芸術に無関心でいることは可能か。
(Peut-on être insensible à l'art ?)
テーマ3:以下のエミール・デュルケム『宗教生活の原初形態』の抜粋を説明せよ。(問題文略)
(explication de texte de Emile Durkheim, "Les formes élémentaires de la vie religieuses", daté de 1912)
さて、いかがだっただろうか。一読しただけではどんな答えを書けばよいのか分からないという人が大半だろうが、もちろん模範解答や採点基準、また解法のテクニックなども存在する。坂本尚志「バカロレア哲学試験は何を評価しているか?―受験対策参考書からの考察―」(『京都大学高等教育研究』第18号、2012年)には、バカロレアの哲学試験で高得点を取る秘訣、またその理念などがまとめられているので、ぜひ一読をおすすめする。同論文の著者は星海社新書より『バカロレア幸福論:フランスの高校生に学ぶ哲学的思考のレッスン』も出版している。
本誌では2014年よりバカロレア資格の過去問を特集してきた。興味をもった方は参照されたい。
バカロレア試験(哲学)過去問
2017年
2016年
2015年
2014年
- これがフランスの大学入試!2014年バカロレア哲学試験問題(文系編)
- これがフランスの大学入試!2014年バカロレア哲学試験問題(理系編)
- これがフランスの大学入試!2014年バカロレア哲学試験問題(経済社会系編)