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7日に行われた決選投票の結果、エマニュエル・マクロン候補がマリーヌ・ルペン候補を下し、フランス新大統領に就任することが決定した。

フランス共和制史上最年少の大統領の誕生は世界中を沸かせた。しかしながら、マクロン新大統領の前途は順風満帆とは言い難い。それどころか、任期を全うする前に自任を余儀なくされる可能性すらあると考えられる。それは、以下の4つの理由によるものだ。

1. 支持率の低さ

大統領選挙におけるマクロンの得票率は必ずしも高くなかった。確かに決選投票で得た得票率は65%と高いが、そもそも棄権者も過去最大級に多く、それに「あの」ルペン相手に6割しか取れなかったのはやはりマクロンの支持率の低さを表していると言わざるをえない。予選投票におけるマクロンの支持率は24%。事実上、フランス国民の4人に1人しかマクロンを支持していないことになる。これでは政権獲得後も国民の支持を背景としたリーダーシップを発揮することはできず、マクロンは政権運営において多かれ少なかれ苦労することになるだろう。

2. 政権母体の弱さ

マクロンは大統領選出馬にあたって新政党「前進!」(En Marche !)を結成したが、この党はお世辞にも盤石とはいえない。政党名「エン・マルシュ」が「エマニュエル・マクロン」と頭韻を踏んでいることからも分かる通り、この組織は実質的にマクロンの個人政党という側面が強い。(※正しい発音は「アン・マルシュ」だが、マクロンの支持者は「エン」のように発音することが多い。)「前進!」はマクロン以外に目立った有力政治家がおらず、また労働組合などの支持基盤となる組織もほとんど存在しない。選挙戦における公開集会もスタッフを務めていたのは学生アルバイトが主であり、運営基盤の弱さを露呈させていた。この母体組織の脆弱さは、政権運営においてマクロンの足元を揺るがしかねないだろう。

3. コアビタシオンの可能性

支持政党「前進!」の脆弱さとも相まって、6月に行われる予定の国民議会(下院)選挙で「前進!」が与党となる可能性は極めて低い。したがって、議会に責任を負う首相は、大統領の所属する政党とは異なった党から選出される可能性が高い。(※これがフランス政治における「コアビタシオン」である。)中でも国民の支持を集めるとかんがえられる有力政党は右派の共和党か、もしかしたら極右の国民戦線から首相が選ばれる可能性もある。万が一そうなった場合、マクロンの政権運営にとって相当な足枷となるだろう。

4. 政治経験の浅さ

マクロン政権が短命に終わるかもしれない理由は、彼を取り巻く状況だけでなく、本人にもある。マクロンの政治経験はオランド政権下で大臣を務めたのみであり、それまでは官僚や銀行家として実務作業を担当していた。そんなマクロンが短期間で大統領候補にまで出世できた要因には、もちろん彼の能力もあるが、周囲の有力者の庇護のおかげでもある。言い方は悪いが、マクロンは「コネでのし上がってきた」とも言えるのだ。大統領の職務はマクロンの得意な経済政策のみではない。ちなみにマクロンは若い頃、哲学者ポール・リクールの下でアシスタントに従事していたこともあるので、教育政策には大いに期待できるだろう。しかしながら、例えば外交において、トランプや金正恩などの「ならず者」と渡り合うことができるのかについては未知数な点が多い。

このように、成立したばかりのマクロン政権は極めて多くの不安要素を抱えていると言わざるをえない。もちろん新大統領がこれらの不安を払いのけ、フランスの抱える社会問題を解決してくれれば言うことはない。新政権の行く末を見守りつつ、若き大統領のお手並み拝見と行きたいものだ。

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