オマール・シー主演映画「ショコラ」が2017年1月、日本リリースされることに決まった。
映画「ショコラ」(監督ロシュディ・ゼム)は、今から百年前、20世紀初頭のフランスに実在した黒人ピエロ「ショコラ」の半生を描いた歴史ドラマだ。主演は「最強のふたり」や「サンバ」などで今やフランスを代表する俳優となったオマール・シー。そのほか、チャップリンの実孫ジェームス・ティエレ、ヒロイン役のクロティルド・エスムなど豪華キャストが脇を固める。
映画「ショコラ」あらすじ
舞台は19/20世紀転換期のフランス、地方を巡業するサーカス団で支配人から肩たたきを食らった冴えないピエロのジョルジュ・フティット(ジェームズ・ティエレ)はある日、「アフリカからやってきた人食い人種の王」の役で見せ物小屋で働いていた黒人の男(オマール・シー)に出会う。フティットは一発逆転を狙い、彼とタッグを組むことを決意。「ショコラ」という芸名を与えて特訓を開始する。ピエロ役が二人という新しい組み合わせで話題性を狙い、いよいよ初舞台へと立った。ところがフティットの考えた渾身のネタは大失敗。ふて腐れたフティットはショコラの尻を蹴飛ばす。
すると予想外にも、客席の一部から笑い声が漏れる。フティットがさらにショコラを蹴飛ばすと客席は大ウケ。二人はこれを持ちネタとして地方サーカスで成功、ベルエポックに沸く花の都パリへと活動の場を移すのだった。
大金を手にし、世間の名声を集めるショコラとフティット。ところが時代は黒人の成功を許さなかった。各地で受ける差別的待遇に憤るショコラ。成功の先にあるものは、そしてフティットとの友情の行方は果たしてどうなるのだろうか…。
映画「ショコラ」の時代背景
映画「ショコラ」で描かれているのは、フランスが「ベル・エポック」と呼ばれた好景気に沸く時代だった。文化の爛熟したパリではサーカス(シルク)が流行し、そこで活躍するショコラの様子はトゥルーズ=ロートレックの絵画やリュミエール兄弟のフィルムにも収められている。当時のフランスはイギリスと植民地競争を繰り広げ、アフリカのサハラ砂漠を中心にアルジェリアなどの植民地を保有した。ショコラ(本名ラファエル)は1860年台にキューバで生まれたと言われているが、彼の両親はアフリカから連れてこられた奴隷である。劇中でも描かれていた通り、当時、パリでは「植民地博」(人間動物園)が行われるなど、有色人種は見世物として動物並みの扱いを受けた。ショコラはアフリカ系としては当時最も成功した人物であると言えるだろう。
なお、映画「ショコラ」は歴史家のジェラール・ノワリエルによって監修されている。社会科学高等研究院(EHESS)で教授を務めるノワリエルは、「アナール学派」の一員として現代フランスを代表する歴史家である。労働者や移民の歴史を専門とするノワリエルの著作は『フランスという坩堝』『歴史学の「危機」』など、日本語でも読むことができる。興味を持った方は参照してみてはいかがだろうか。
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