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フランス中を衝撃が走った。今月17日より行われている大学入試「バカロレア」にまさかの出題ミスが発見されたのだ。

バカロレア試験はフランスの大学入試。日本のセンター試験と同様、大学入学を目指すほぼすべての高校生が受験する。マーク式のセンター試験と違って回答は論述式で、特に哲学試験では4時間にわたって難問を解くことで有名な試験だ。
そんなバカロレア試験、今回出題ミスが発見されたのは18日に実施された「歴史学・地理学」の試験だ。現代史の問題で「(人類初の月面着陸を成し遂げた)アポロ11号のニール・アームストロング船長によって撮影された写真(1969年)」というキャプションを付けられた写真が、実は1972年に打ち上げられたアポロ17号のものだったことが判明したのだ。
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問題の写真はこちら。写真の人物はアポロ11号のバズ・オルドリンではなく、実際はアポロ17号のユージン・サーナンだ。理系を除いた全ての学生が「歴史学・地理学」を受験したこともあり、この出題ミスはフランス中に大きな衝撃を与えた。

とはいえ、該当箇所は問題の主旨とは直接関係せず、これによって解答が不可能になるといった類のものではない。「そんな細かいミスを気にするのはマニアだけ」などという声も聞こえてきそうだ。

フランスではこの問題に対して様々な意見が飛び交っている。大手日刊紙の「ル・モンド」は23日付の記事において、アームストロング船長の「私にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな一歩だ」をもじって「政府にとっては小さなミスかも知れないが、学者たちにとっては大きな誤りだ」として、各界の意見を紹介している。

当該記事では、「この出題ミスは問題の理解を妨げるものではない」とする政府高官の意見を紹介する一方で、フランスを代表する歴史学の研究機関である社会科学高等研究院(EHESS)でビジュアル資料の歴史を研究するアンドレ・ガンテール氏による、以下のようなコメントを掲載している。
ここには以下のような矛盾が存在します。すなわち、出題者は文書史料を分析するだけでなく画像の比喩的な読解をも行っており、受験生に対しても同じことをするよう求めているのです。
このコメントはガンテール氏のブログに掲載されたもの。日本と同様、大学入試が大きな位置を占めるフランスでは、この問題についてまだまだ議論が続きそうである。

photo: emmottontechnology.com, lemonde.fr