
アドルフ・ヒトラーといえば、一体どのようなイメージを持つだろうか?
「強権的な独裁者」「残忍な戦争犯罪人」といった恐ろしくネガティヴなイメージがほとんどだろう。実際、ナチス政権下のドイツでは、全権委任法に基づくヒトラーの個人独裁体制の下、多くのユダヤ人や反政府勢力が殺害されたこともあり、現在ヒトラーは史上最悪の歴史的人物の一人として世界中で記憶されている。
こうした恐ろしいヒトラーのイメージが、他ならぬナチス自身の宣伝活動によって形成されたことも事実である。宣伝省ヨーゼフ・ゲッベルスの下、ヒトラーは自身の権威を高めるべく、映画や著作を利用して様々なプロパガンダを行った。以下に掲載する動画はそうしたプロパガンダ映画のうち最も代表的なものの一つ、レニ・リーフェンシュタール監督による「意志の勝利」である。
しかしながら今回、上述のようなヒトラーの「厳格な独裁者」イメージを覆すような写真が発見された。以下のようなものである。

ドヤァ…
いかがだろうか。雪におおわれた森の中、木の下で一人たたずみ憂愁の表情を浮かべる男。どこからどう見ても痛いオジサンだが、紛れもなくかの独裁者アドルフ・ヒトラーである。
この写真の中でも特に見るものの目を引くのが、彼の足元だろう。まるで小学生が履くような短い半ズボンと、これまた小学生のような白いソックスが、写真の痛々しさを際立たせている。雪のなか、寒くないのだろうか? 実はこれ、バイエルンを中心とする南ドイツの伝統的な服装である「レーダーホーゼン」(lederhosen)というもの。上の写真でヒトラーはベルトを着用しているが、肩ひもがついたものも一般的で、ドイツではビール祭(オクトーバーフェスト)などの機会に男性が着用する。
なお、痛いオジサン…もといヒトラーは「レーダーホーゼン」がお気に入りのようで、半ズボンを着用した別の写真も存在する。以下のようなものである。

ドヤァ……
こちらはナチスの制服を着用し、肩には党員証が見えるものの、下はやはりレーダーホーゼンである。ドイツの民族アイデンティティを感じさせるこの服装がよほどお気に入りだったのだろう。
これらの写真はヒトラーの専属カメラマンであったハインリヒ・ホフマンによって撮影されたものだが、プロパガンダによりドイツ国内に大量に流出。ヒトラーの権威を高める結果となった…かどうかは知らない。
そんなヒトラーの恥ずかしい写真は、第二次大戦後、数奇な運命をたどる。焼け跡のドイツの家屋から『眠りから覚めたドイツ』なるこれまた恥ずかしいタイトルの同人誌が発見され、作戦に参加したイギリス軍兵士はそれを母国に持ち帰った。中には例のドヤ顔で写ったヒトラーの写真がズラリ! そんな痛い同人誌は70年の時を経て、なんと今回、イギリスの軍事史家の手によって翻訳・復刊されることになった。一体どんな内容になっているのだろうか…
気になるタイトルは『The Rise of Hitler Illustrated』、2015年5月刊行予定という。Kindle版も存在し、Amazonでも買うことができるので、ヒトラーの恥ずかしい写真がもっと見たいという読者は今すぐ要チェックだ。
photo: biography.com & dailymail.co.uk