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フランス東部にある「ロンシャンの礼拝堂」は、ル・コルビュジェ最高傑作の一つとして世界的に名高い。

ロンシャンの礼拝堂は正式名称を「ノートル・ダム・デュ・オー礼拝堂」(Chapelle Notre-Dame du Haut)と言う。日本では「ロンシャンの教会」と呼ばれることも多いが、正確を期すなら教会(Eglise)ではなく礼拝堂(Chapelle)である。

ロンシャンの礼拝堂は1955年、スイス生まれの世界的建築家、ル・コルビュジェの手で竣工した。 もともとこの地には中世以来の礼拝堂が存在したが、第二次大戦中にドイツの空襲により消失。戦後、礼拝堂再建のデザイナーとしてル・コルビュジェに白羽の矢が立った。

RC造のシェル構造からなる独特の形状をしたこの礼拝堂は、ル・コルビュジェ後期の傑作として世界的に名高い。しかしながら、スイスとの国境近くにあるアクセスの不便さが災いして、ここへ実際に訪れた人は建築の専門家でも多くはない。

とはいうものの、事前の準備さえしっかり行っていれば、ロンシャンの礼拝堂を訪問することは決して不可能ではない。一度訪れてみたいという読者のために、今回はロンシャンの礼拝堂のアクセス方法を紹介する。

所在
まずは住所から礼拝堂の位置を確認しよう。以下のGoogleマップで示す位置が礼拝堂の場所だ。

住所:13 Rue de la Chapelle, 70250 Ronchamp, FRANCE 


ロンシャンはフランス東部、スイスとの国境近くにあるフランシュ=コンテ地域圏のオート=ソーヌ県に所在する。フランシュ=コンテはコンテ・チーズやヴァン・ジョーヌ(黄色ワイン)で有名な農村地帯。「ジュラシック・パーク」の語源でもあるジュラ山脈の石灰岩質台地が独自の景観を構成している。ロンシャンの礼拝堂を訪問する際は、これらの特産物を楽しんでみるのもよいだろう。
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(※なお2016年1月より、フランシュ=コンテ地域圏は隣接するブルゴーニュ地域圏と合併し、ブルゴーニュ・フランシュ=コンテ地域圏となる。)

交通

日本からロンシャンの礼拝堂へアクセスする場合、まずは飛行機でパリへ渡航する必要がある。スイス側からロンシャンへ行くという裏技もなくはないが、ここではオーソドックスな方法を紹介しよう。ただスイスから行った方が近道ではあるので、興味があるという読者はリサーチしてみても良いかもしれない。

日本から飛行機でパリへ到着したら、まずはフランシュ=コンテ地域圏最大の街であるブザンソン(Besançon)へ向かおう。ブザンソンは文豪ヴィクトル・ユゴーや思想家プルードンの生地として知られ、語学学校の「応用言語学センター(CLA)」もある。学生などでまとまった時間が取れるなら語学留学をあわせて行うのも良いかもしれない。

パリからブザンソンはフランス式新幹線のTGVで3時間ほどで行くことができる。ブザンソン行のTGVはシャルル・ド・ゴール空港駅やリヨン駅から出ており、チケットの予約はレイルヨーロッパジャパンなどのwebサイトから行うことができる。また、駅で直接チケットを購入することもできるので、フランス語で会話ができる読者はその方法を取るのも良いだろう。ただし事前にインターネットで予約を行えば割引運賃が適用される場合があるので、本誌では事前予約をオススメする。
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CDG空港やリヨン駅からTGVに乗って3時間、もちろんここはフランスなので電車の遅延はよくあること。到着するのはブザンソン・フランシュ=コンテTGV駅(Gare de Besançon Franche-Comté TGV)だ。直線的なデザインで、2011年にオープンしたばかりの新しい駅である。

ブザンソン・フランシュ=コンテTGV駅はブザンソン市内中心部から5kmほど離れた位置にある。フランスでTGVの駅は空港と同じ位置付けのため、都市部とはやや離れた位置に建設されるのだ。そこでTER(地域圏急行輸送)という電車を使ってブザンソンの都市部にあるブザンソン・ヴィオット駅まで移動する必要がある。TERのチケットは駅の自動販売機で購入でき、値段は3.30ユーロ(2015年1月)。電車はおおむね1時間おきに運行しており、時刻表はこちらから確認することができる。

TGVの駅からブザンソン・ヴィオット駅(Besançon-Viotte)までは約20分で着く。ブザンソンはドゥー川の湾曲部にあり、湾曲した部分の内側にホテルや商業施設が集中している。ブザンソン・ヴィオット駅から市内中心部までは約1km。歩いても行けなくはないが、坂が多いのでスーツケースを持ったままだとしんどいし、道も湾曲しているので迷いやすい。そこでGinko(ジンコ)の運営するバスやトラム(路面電車)を使うのがよいだろう。路線図はこちら。夜10時以降は本数が激減するので要注意だ。



パリからロンシャンまで日帰りで行くのはかなりハードだ。ブザンソンからだと朝出発して、帰りは夕方になると見るのがよい。じっくり観光を楽しみたいなら、ブザンソンにホテルを借り、フランシュ=コンテ観光を一緒に行うのが賢いやり方だろう。ちなみに周辺にはクロード・ニコラ・ルドゥーによるアルケ=スナンの王立製塩所もあるので、建築ファンには嬉しい所だ。

それではブザンソンからロンシャンまではどう行けばよいのだろうか。はじめに概略を述べると、(1)「ブザンソン→ベルフォール→ロンシャン」あるいは(2)「ブザンソン→ヴズール→ロンシャン」の順で行くことになる。以下、経路別に解説しよう。

(1)「ブザンソン→ベルフォール→ロンシャン」

まずはブザンソンからベルフォール(Belfort)までだが、これは電車(TER)で簡単に行くことができる。ブザンソン・ヴィオット駅から出るTERの時刻表はこちら。ここからベルフォール・ヴィル(Belfort-Ville)駅まで鈍行で行くことになる。

ベルフォールは1870年の普仏戦争に際し、ダンフェール=ロシュロー大佐率いる連隊がプロイセン軍に対して決死の抵抗を行ったことで知られる。これを記念して製作された「ベルフォールのライオン」像は、レプリカがパリ南部の「ダンフェール=ロシュロー広場」に置かれてある。ちなみにこの広場にはクロード・ニコラ・ルドゥーによる「アンフェールの市門」もあるので、建築ファンには嬉しい観光スポットだ。
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ベルフォールからロンシャンまでは電車とタクシーによる二つの行き方がある。どちらにするかは運賃を取るか、時間を取るかによるだろう。電車は安いが本数が少なく、タクシーは融通が利くが料金は高い。

まずは電車で行く方法から。ベルフォール~ロンシャン間の電車は数時間に一本しか出ていないので、こちらの時刻表で事前に確認し、よく計画を練っておく必要がある。下手をすると昼ごはんを食いはぐれかねないので、電車の待ち時間に食べておくのがよいだろう。駅の中に小さな売店があるほか、駅前にいくつかこじんまりとした店が出ている。

一度電車に乗れば20分ほどでロンシャンの町に到着する。あとは礼拝堂に行くだけだ。しかしこれが最後の関門。礼拝堂は山の上にあるので、1時間近く徒歩で登らねばならないのだ。夏の日差しが厳しい時期はまさに灼熱地獄だ。駅からタクシーも出てはいるが、ここでタクシーを使うくらいならベルフォールから乗った方がよい。体力と相談して決めるべきだろう。

駅から歩行者用の標識に沿って歩けば、目的の礼拝堂に辿りつける。苦労して行けば感動もひとしおだ。かつて中世の巡礼者たちもこうして神との対話を試みたのだろうか。

あるいは、ベルフォールからタクシーに乗るなら、駅前にいる車をつかまえると良い。向うは観光客慣れしているので「ア・ホンション」(ロンシャンまで)などと言えば問題なく連れて行ってくれる。生き馬の目を抜くパリと違って、フランシュ=コンテの住民は温厚な人が多いので、ぼったくられることは恐らくない。心配なら事前に「セ・コンビヤン?」(いくら?)などと聞いておくとよいだろう。

(2)「ブザンソン→ヴズール→ロンシャン」

ベルフォールの代わりにヴズール(Vesoul)経由でロンシャンに行く方法もある。基本的な手順はベルフォール経由と同じで、まずはブザンソンからヴズールまでTERで行く。時刻表は先ほどと同じ、こちらから閲覧できる。

ヴズールからロンシャンまでも先ほどと同じ、電車かタクシーで行くことができる。電車の時刻表はこちら。先ほどと同じwebサイトだ。数時間に一本して出ていないので、事前によくリサーチしていくことをおすすめする。

電車でロンシャンに着いた後は、これも先ほどと同じ。1時間ほど山道を歩けば、目標の礼拝堂へたどり着くことができる。

ちなみにフランシュ=コンテ地域圏のTER路線図はこちら。ロンシャンはブザンソンの北東にある。頭に入れておくと何かと便利だろう。
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以上がロンシャンの礼拝堂へのアクセス方法のあらましである。ちなみにブザンソン経由ではなくミュルーズ経由で行く方法もあるが、筆者が未確認なのと、ブザンソンの街並みの美しさを体験していただきたいという思いから、今回は割愛する。

なかなか文章だけでは伝わりづらい部分も多かったと思う。これから礼拝堂を訪れようと考えている読者は、ぜひ実際に現地を訪れ、試行錯誤しながら旅の楽しみを味わってほしい。苦労の末に礼拝堂の静謐な内部空間へたどり着いた時、たとえあなたがキリスト教徒でなかったとしても、きっと神々しさを感じることができるだろう。

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