以前より計画が進められてきたニカラグア運河が、いよいよ12月22日に着工する。
ニカラグア運河は中米ニカラグアを横断し、「第2のパナマ運河」として太平洋と大西洋をつなぐ運河。全長は278kmで、パナマ運河の3倍。 総工費は500億ドル(約6兆円)と見積もられており、中国企業が受注することになっている。完成予定は2020年だ。
完成すれば史上まれに見る大運河となるこのプロジェクトだが、実は今から2世期前の1846年にも同じプロジェクトが持ち上がっていた。
プロジェクトの提唱者はルイ=ナポレオン。かのフランス皇帝ナポレオン・ボナパルトの甥で、 のち1852年に第二帝政皇帝「ナポレオン3世」として即位した。皇帝即位の前年に起こしたクーデタでヴィクトル・ユゴーら多くの共和派を弾圧したほか、1870年にはプロイセンとの戦争でビスマルクに敗れ、虜囚の辱めを受けたこともあり、フランス本国ではあまり人気のない人物である。それゆえ、ルイ=ナポレオンによるニカラグア運河の計画も今までほとんど知られることがなかった。
ルイ=ナポレオンがニカラグア運河の計画を思いついたのは何と獄中だった。1840年、ルイ=ナポレオンは陰謀に失敗し、国家反逆罪で終身刑を宣告される。彼が収監されたのはソンム県にあるアムの牢獄。彼はここで6年間を過ごした後、チャンスを見計らって脱獄、ロンドンへ亡命した。獄中で中南米の政府高官と接触していたルイ=ナポレオンが、ロンドンで出版した著書が『ニカラグア運河(The Canal of Nicaragua)』である。
著書『ニカラグア運河』においてルイ=ナポレオンは、運河を通じて貿易を活性化させることで貧困層の救済を図る独自のプランを発表した。レセップスによるパナマ運河開通が1869年であることを考えると、20年以上も前に発表されたニカラグア運河は極めて先見の明あるプランだと言えるだろう。
なお、『ニカラグア運河』は現在著作権切れとなっており、 オンライン上で全文閲覧できる。フランス語を勉強したことがあるという読者は、ニカラグア運河着工の記念にこちらから閲覧してみてはいかがだろうか?