フランスのギター奏者ローラン・ディアンスによる「タンゴ・アン・スカイ(Tango en skai)」(1985年)は、クラシックギターの名曲として多くの奏者の人気を集めている。

「en skai」とはフランス語で「合成皮革の」という意味。正統派のタンゴではなくまがい物の作品だというニュアンスをこめ、ディアンス自身が付けた名前だ。

この曲をレパートリーに含めている奏者は日本人の中にも多い。大萩康司がしばしば演奏しているほか、村治佳織の演奏がテレビCMに起用されたことでお茶の間にも浸透した。

Youtubeでは数名のプロ奏者が自身の演奏をアップロードしているのをいくつか紹介する。どれも個性的な演奏で、聴き比べてみるとおもしろい。

Roland Dyens



大萩康司



Mirzoyan-quartet & Artyom Dervoed



いかがだっただろうか。自分の好きな演奏が見つかったという読者は、それをお手本にして練習してみては?
なお譜面は以下のURLから入手することができる(Tab譜)。
http://www.guitaretab.com/r/roland-dyens/178731.html

「Tango en skai」収録CD 

来年の9月からフランスに交換留学へ行くことになり、ビザを申請しなければならないという学生さんは多いでしょう。しかしながら、ビザの申請手続きはとにかく面倒くさいもの。Campus Franceにフランス大使館と様々な役所をハシゴしなければいけないのも分かりづらいです。

そこで今回は、交換留学用の学生ビザ申請の手順を説明します。基本的にはCampus Franceのwebサイトにある「手続きの流れ」に従いつつ、適宜補足を加えていきます。なお別のタイプの留学の場合はこれとは少し手順が異なりますので、また稿を改めて紹介したいと思います。

ステップ1:Campus Franceでアカウントを作成する

ビザ申請はフランス政府留学局(Campus France)日本支局を通して行われます。まずはwebサイト(http://www.japon.campusfrance.org/)で自分のアカウントを作成するのが最初のステップです。

ステップ2:オンラインフォームに記入する

基本的にはwebサイトにある「オンラインフォーム入力ガイド」に従い、「学歴」「外国語」「動機」の欄を記入すれば大丈夫ですが、いくつか分かりにくい点があります。
・リンクは文字ではなく、アイコン(虫眼鏡や鉛筆)に張られている。
・ここで添付する書類は「在学中の大学の在学証明書」「フランスの留学先の受け入れ許可証」の2点だけでOK。高校の成績証明書などは不要でした。
記入が済んだら tokyo@campusfrance.org までメールで連絡します。

ステップ3:手続き料金を支払う

アカウント内「メールボックス」に支払いの説明が届いたら、Campus Franceの手続き料金15,000円を指定された口座に振り込みます。アカウント内では20,000円と表示される場合がありますが、実際の振り込みは15,000円で大丈夫です。入金が済んだらCampus Franceまで連絡します。なお、これはあくまでCampus Franceの手続き料金であり、大使館での手続き料金は別にかかりますので、注意が必要です。

支払いを済ませてCampus Franceにメールで連絡すれば、Campus Franceの手続きはこれで完了です。続いてフランス大使館への申請に移ります。

ステップ4:大使館へ必要書類を提出する

在日フランス大使館領事部のビザセクションへ、毎週水曜日の10時~11時半の間に出向いて必要書類を提出します。必要書類はこちらに記載されているものに加えて、Campus Franceの手続後に発行される仮登録証明書(Attestation de préinscription)が要求されます。また、経済証明書は必ずしもフランスでの銀行やフランスでもキャッシュカードが使える銀行でなくてもよく、三菱東京UFJ銀行の残高証明でも受け付けてもらえるそうです。要は定められた以上の就労をしなくても生活できるだけの預金があることが証明できればよいので、金額さえ満たしていれば大丈夫なようです。なお、残高証明発行は1週間程度かかるので、時間に余裕をもって書類を揃えるとよいでしょう。

ステップ5:ビザ発行!

長い手続き期間を経て、ようやくビザが発行されます。審査期間は2~3週間などと言われていますが、交換留学の場合は1週間程度で審査してもらえるようです。

いかがでしょうか。実際はフランス入国後も移民局(OFII)での手続、住宅補助(アロカシオン)申請、健康保険加入など必要な手続きは多いですが、日本国内で必要なことはこれが全てです。以前に比べて簡略化されたとはいえ、今なお複雑なビザ申請手続きですが、本稿が何かの役に立てば幸いです。


パリ中心部、シャンゼリゼ通り近くの「グラン・パレ」(Grand Palais)において10月より、葛飾北斎をテーマとした展覧会「Hokusai」が開催されている。

葛飾北斎(1760-1849年)は、欧米で最も著名な日本人画家として評価が高い。グラン・パレの公式webサイトでは『富岳三十六景』の代表作「神奈川沖浪裏」や、「風流無くてなゝくせ 遠眼鏡」、「鯉(団扇図)」という北斎の作品3点が掲載されれている。

今回の展示はそんな北斎の浮世絵を中心に500点が公開される。国外でこれほど多くの北斎の作品が集まるのは前代未聞のことだという。2016年に東京に北斎美術館が建てられるまでの期間を利用して可能になったものであり、国外在住の方は要チェックだ。海外暮らしに疲れたという読者は、この機会に日本美術の粋を堪能してみては?


「Hokusai」展
場所:Grand Palais (254/256 rue de Bercy, 75577 Paris)
料金:13ユーロ(割引9ユーロ)
会期:2014/10/1~2015/1/18(11/21~30は休館)
開館時間:月曜10~20時、火木金曜10~22時、土曜9~22時、日曜9~20時、水曜閉館)

フランスでそれなりに長く生活するなら、現地で手に入るフリーペーパーは情報を得るのにうってつけである。特にそれが日本語で読めるなら言う事なしだ。

実はフランスには在仏日本人の手によるフリーペーパーが複数存在する。代表的なものをいくつか紹介しよう。


・OVNI (http://www.ovninavi.com/accueil)
毎月1・15日発行
facebook : https://www.facebook.com/ovninavi

・France News Digest (http://www.newsdigest.fr/newsfr/index.php)
毎月第1・3木曜日発行
twitter : @newsdigest
facebook : https://www.facebook.com/france.news.digest

・ FR JAPON (http://www.fr-japon.com/frj/)
毎週金曜日発行


いずれの雑誌も購読は無料。オンライン版のほか、紙媒体は日本人の経営している飲食店などで配布されている。オペラ座近くの日本人エリアで見かけることが多い。また定期購読も可能だ。詳細は公式ホームページをチェックされたい。

内容はニュースやエンタメ情報のほか、フランス生活に役立つコラム、さらには賃貸や求人といった耳寄り情報も掲載されている。時々ワイン試飲会やコンサートなどの招待券が付いてくるのも嬉しいポイントだ。フランスで生活するならぜひ定期的にチェックしておきたい。

早川書房が16日、作家フィリップ・K・ディックのブランドサイトをオープンしたことを発表した。

SF好きにとってフィリップ・K・ディックは避けて通れない存在だ。近未来の管理社会を舞台に形而上学的なテーマを問う作風は、世界中に多くのファンをもっている。近年では『スキャナー・ダークリー』や『マイノリティ・リポート』などが映画化され、話題を呼んだ。

そんなディックの代表作『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』は『ブレードランナー』として映画化もされ、現在もなおディック作品の中でも特に評価の高いものの一つであり続けている。



『アンドロ羊』原作の早川文庫版は数年前にカバーを一新し、ディックの世界観を表した斬新なデザインが話題を呼んだ。そこで今回、早川書房はディックのブランドサイト立ち上げにあたり、商品第1弾として『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』のデザインTシャツをリリースした。


文庫の表紙デザインが大きくデザインされたTシャツで、ファン待望のアイテムだ。サイズはMとL、価格は税込3260円。気になったという読者はぜひブランドサイトから購入されたい。なお今後もアイテムは続々と発表される予定とのこと。早川書房の今後から目が離せない。
 
 

電子書籍はここ二三年で大幅にシェアを伸ばしたと言ってよい。それはわが国のみならず、諸外国でも同じことが言える。それは以下のグラフを見ても明らかだ。


いかがだろうか。 2014年の段階で紙媒体の売り上げは米・日・独でほぼ拮抗しているが、アメリカにおける電子書籍の売り上げは群を抜いている。日本の電子書籍の売り上げはイギリスとほぼ同値で、独・中・伊において電子書籍がまだほとんど普及していない点が興味深い。

リンク先の元サイトを閲覧すると、2009年以降の推移を見ることができる。2009年の段階で日米の電子書籍売り上げはほぼ同値だったが、年を経るごとに米英が大きくシェアを伸ばしていることが読みとれる。

一方、英語圏と日本以外の国で電子書籍があまり普及していない点も興味深く見ることができる。電子書籍が世界から紙媒体を駆逐する日はまだ先のようだ。国立図書館館長が「Googleとの闘い」を宣言したことでも知られる文化大国フランスなど、他の国の動向も気になるところだ。

今後の予想によると、2018年には米英で電子書籍は紙媒体の売り上げを上回るという。本当だろうか。いずれにせよ、電子書籍の今後から目が離せない。
 

お洒落なカフェやバーに行くと、缶に「1664」と大きく印字してあるビールが置いてあるのを見る機会があるかもしれない。これはフランスの代表的なビール「クローネンブルグ(Kronenbourg)」だ。

ヨーロッパでビールといえばドイツやオランダが有名だが、フランスでもドイツとの国境線沿いのアルザス地方ではビール生産が盛んだ。クローネンブルグはそのアルザスを代表するビールメーカーで、ラベルに掲げてある1664とは醸造所の創設年を表している。

日本では主に「1664」のブランドのみが飲食店等で提供されているが、フランスでは通常の「Kronenbourg」も含めて酒店やスーパーで販売されている。通常バージョンは赤い缶が目印、青を基調としたデザインの「1664」はやや高級なバージョンだ。いずれもラガータイプで飲みやすいが、「1664」の方がすっきりした味わい。値段は通常バージョンが500ml缶1ユーロ、1664は1.5ユーロほどで売られている。

ちなみに今年2014年、クローネンブルグは創業350年を迎える。ビールが好きだという読者は、フランスへ旅行した際、記念に手に取ってみてはいかがだろうか。


スウェーデン・アカデミーは9日、2014年のノーベル文学賞をパトリック・モディアノ氏に授与することを発表した。

パトリック・モディアノ(Patrick Modiano)氏は1945年生まれのフランス人作家。パリ南西部のブローニュ=ビアンクール出身。下馬評では以前より受賞を噂されていたが、満を持しての受賞となった。

モディアノ氏の作品の中には日本語訳されているものも数点ある。現在も入手できるものを以下にリストアップしたので、読者の参考になれば幸いである。

・Dans le café de la jeunesse perdue
失われた時のカフェで』平中悠一訳、作品社、2011年。


・Dora Bruder
1941年。パリの尋ね人』白井成雄訳、作品社、1998年。


・Dimanches d'aodût
八月の日曜日』堀江敏幸訳、水声社、2003年。


・Rue des Boutiques Obscures
暗いブティック通り』平岡篤頼訳、白水社、2005年。


・Livret de famille
家族手帳』安永愛訳、水声社、2012年。

『タイムズ・ハイアー・エデュケーション(THE)』は1日、毎年恒例となっている世界大学ランキングの最新版(2014-15)を発表した。

THEは英米系メディアの『タイムズ』が毎年秋に発行する教育情報誌。9月に発表されるQS社のランキングと並んで、世界中の注目を集めるランキングである。

気になる上位校とその所在国は以下の通り。 

1. カリフォルニア工科大学(米国)
2. ハーバード大学(米国)
3. オックスフォード大学(英国)
4. スタンフォード大学(米国)
5. ケンブリッジ大学(英国)
6. マサチューセッツ工科大学(米国)
7. プリンストン大学(米国)
8. カリフォルニア大学バークレー校(米国)
9. インペリアル・カレッジ・ロンドン(英国)
9. イェール大学 (米国)

今回も上位層を英語圏が独占している。首位のカリフォルニア工科大学(Caltech)は聞きなれない大学だが、THEの世界ランキングでは4連覇を続けている実力派の大学である。QS社のランキングでも世界8位にランクインしている。 少人数制の単科大学ならではの研究能力が評価された形だ。

なお、200位以内に名を連ねた日本の大学は以下の通り。

23. 東京大学
59. 京都大学
141. 東京工業大学
157. 大阪大学
165. 東北大学
 
東大は昨年と同順位だが、アジアでは首位、非英語圏を総合してもスイス・チューリヒ工科大学(13位) に次ぐ順位へランクインした。クォーター制への移行をはじめとする一連の国際化の動きが一まずは功を奏した結果といえるだろう。

現代フランスを代表する知識人であるピエール・ロザンヴァロン(Pierre Rosanvallon)の名前は、わが国では専門家を除いてほとんど知られていない。しかしながら、豊富な歴史知識に裏打ちされた彼の政治哲学は、現代社会に多くの示唆を与えてくれる。民主主義や福祉国家について積極的に発言を行っているピエール・ロザンヴァロンとは一体どのような人物なのだろうか?

ロザンヴァロンは1948年、サントル地域圏のブロワに生まれた。名門グランゼコールであるHEC経営大学院を1969年に卒業するなど、順調にキャリアを開始する。

この間、ロザンヴァロンは政治活動へ没頭した。労働組合のCFDTや統一社会党へ参加し、76年には左翼運動に思想的基礎を与える著作『自主管理の時代』(L'Âge de l'autogestion)を発表、一時は政治家となる道も噂された。

ところが、ロザンヴァロンは研究に復帰する。1979年、クロード・ルフォール(Claude Lefort)の指導下で、近世~近代の経済思想をテーマとした第3課程博士論文『ユートピア的資本主義』(Le Capitalisme utopique)を執筆し、続いて1985年には19世紀前半の自由主義を扱った国家博士論文『ギゾーのモーメント』(Le Moment Guizot)を完成させる。これによりロザンヴァロンは歴史研究者としての地位を確固たるものとした。
 
とはいえ、ロザンヴァロンは社会参加への志向を捨てたのではなかった。1982年にはフランス革命修正派の歴史学者として知られるフランソワ・フュレと共同で「サン=シモン財団」を設立。学界と財界を接続するシンクタンクとして、フュレの死後、1999年まで活動を続けた。なおサン=シモン財団からは、『21世紀の資本論』で脚光を浴びている経済学者トマ・ピケティなども輩出した。

ロザンヴァロンが主として研究に従事した機関は社会科学高等研究院(EHESS)である。フュレも院長を務めたこの機関で、彼は主任教授として研究・教育に携わった。2001年にはフランスの最も権威ある学術機関の一つ、コレージュ・ド・フランスの近代政治史講座担当の教授に任命される。現在はコレージュで政治哲学をテーマとする講義を行いつつ、主として研究活動に従事している。

国家博士論文脱稿後のロザンヴァロンの仕事は、主としてフランス革命後の近代民主主義を主題とした政治哲学の領域で展開されている。1990年の『フランス国制史:1789年~現代』(L'État en France de 1789 à nos jours)を皮切りに、2004年の『フランス型政治モデル』(Le Modèle politique français)に至るまで、フランス革命によって打ち出された一般意思に基づく政治原理の持続性を強調した。

他方でロザンヴァロンは、社会福祉についても積極的に発言を行っている。1981年に発表された『福祉国家の危機』(La Crise de l'État-providence)、あるいは近年の『連帯の新たなる哲学』(La nouvelle question sociale)がそれだ。

このようにロザンヴァロンの研究テーマは多岐にわたるため、わが国では幅広い領域の研究者によって受容されている。例えば、歴史学では19世紀史を専門とする喜安朗小田中直樹が著書でロザンヴァロンに言及している。法学では高村学人がロザンヴァロンに依拠して法制史の論文を書いている。

さらに、社会思想史では北垣徹や田中拓道がEHESSに留学し、ロザンヴァロンの指導を受けている。ロザンヴァロンを含むEHESSの政治哲学派については宇野重規『政治哲学へ』が参考になる。研究の全体像把握が困難なロザンヴァロンだが、フランス現代社会科学を理解するうえで避けては通れない研究者だと言えるだろう。

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