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現地時間24日夜(日本時間25日未明)、フランス大統領選挙のマリーヌ・ルペン候補が所属政党「国民戦線」代表を辞任することを発表した。

マリーヌ・ルペンは23日の第一次投票において、「前進!」のエマニュエル・マクロン候補に次ぐ2位で決選投票への進出を決めたばかり。そんなルペン候補の所属政党代表辞任はフランスに大きな波紋を呼んでいる。

マリーヌ・ルペン候補の所属する国民戦線(FN:Front national)はフランスの極右政党。1972年にマリーヌ・ルペンの父親であるジャン=マリ・ルペンによって結成された。移民排斥や反EUを掲げるFNの国粋主義的思想は当初フランスで支持を集めなかったが、2011年のマリーヌ・ルペン党首就任、そして2015年の同時多発テロ事件を経て、近年急速に支持を集めている政党である。

マリーヌ・ルペン候補は今回「私は党派的思考を超越する」として国民戦線代表辞任を表明。この措置は選挙期間中の一時的なものと推測されるが、父親以来の国民戦線のダーティなイメージの脱却を図ったものとする見方もある。

なお、対立候補のエマニュエル・マクロンはオランド政権下の大臣を務めたが、現在は自身の立ち上げた新党「前進!」(En Marche !:Emmanuel Macronと頭韻を踏んでいる)を率いている。EM!は組織としては弱体であり、事実上マクロン個人の後援会という性格が強い。この新党結成により社会党出身のマクロンは左翼という党派性を脱却し、フランス政局において中道のポジションを得ることに成功した。ルペン候補のFN辞任もこれに対抗するものとも考えられる。「フランス的なアイデンティティを体現する中道政治家と狂信的でダーティな極右」の構図が維持されたままでは、ルペンにとって明らかに分が悪いからだ。

フランス国立社会科学高等研究院のピエール・ロザンヴァロン教授(政治思想史)は今回の大統領選挙に際し今日の民主主義は政党によるものからリーダーシップによるものへと移行しつつあると分析している。身分や職業の利害を政党が代表する時代は終りを迎え、個性的なリーダーを個々人が支持する時代が訪れたというのだ。長年に渡って代表制民主主義の研究を続けた歴史家の言葉は重い。我々は歴史の転換点にいるのだろうか。来月7日の決選投票から目が離せない。



photo: cnn.com