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2016年6月24日、欧州統合の歴史に残る投票結果が明らかになった。

日本時間24日13時の時点でBBCは「離脱」派の勝利確実を予測。1973年以来のイギリスと大陸ヨーロッパとの蜜月関係に幕が下ろされることがほぼ確実となった。

欧州統合へのイギリスの参入:1957~1973年

第二次大戦後、フランスが主導してきたヨーロッパ統合に対し、当初イギリスは否定的だった。フランスのシャルル・ド・ゴール大統領の強権的な姿勢に反対し、イギリスは独自の経済圏であるEFTA(欧州自由貿易連合)を1960年に形成、フランスと西ドイツの主導するEEC(欧州経済共同体:1957年成立)に対抗した。
 
その後、ド・ゴールの退陣や、欧州に親和的な英国のエドワード・ヒース首相就任とあいまって、1973年、ついにイギリスのEC(欧州共同体)加盟が実現。その後、冷戦終結と前後して東欧諸国の加盟が成り、壮大な欧州統合の実験が本格的にスタートした。

欧州統合におけるイギリスの立場:1973~2016年

冷戦終結後の1993年に成立したEU(欧州連合)において、イギリスは常に微妙な立場にあった。域内の国境検査を免除するシェンゲン協定(1985年調印)には加盟せず、現在も英仏国境では厳しいパスポートチェックが行われる。またEU独自の地域通貨であるユーロはイギリスでは使用されておらず、代わりにスターリング・ポンドが流通している。

こうした英国の孤立主義には感情的なものも含めて多くの要因が存在するが、一つには、現在欧州を悩ます移民問題がある。フランスなど大陸ヨーロッパではここ数年、中東紛争と相まって移民・難民が急増し、その対応に追われている。テロの危険も無視できず、2005年に起こったロンドン同時爆破テロ事件もイギリス国民の態度を硬化させる一因となっている。英仏国境では現在、国境警備が強化されており、英仏海峡沿いにある都市カレーではフランス軍が不法移民の取り締まりを行っている。さらに、ギリシアの経済問題にともなう金融危機もイギリス人のEUへの距離感を増大させている。

いずれにせよ、今回の投票結果を受けて、欧州統合が新たなフェーズに入ったことは間違いない。地域間友好がまぼろしにおわるのか、EUの動向に世界が注目している。

関連文献

なお、欧州統合が実際に動き出したのは第二次世界大戦後だが、理念としては近代以降、多くの思想家がヨーロッパ統合の構想を提唱してきた。以下の文献は欧州統合の思想的基礎となっているので、この機会に一読を推奨する。


イマニュエル・カント『永遠平和のために』



アベ・ド・サン=ピエール『永久平和論』



アンリ・ド・サン・シモン「ヨーロッパ社会の再組織について」



リヒャルト・クーデンホーフ=カレルギー『パン・ヨーロッパ』

photo: aljazeera.com