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フランスでは現在、ある能面が注目を集めている。

問題の能面はパリのセーヌ河畔にあるケ・ブランリ美術館で開催される特別展「ジャック・シラク~文化間の対話」で展示されるもの。ケ・ブランリ美術館はアジア・アフリカの伝統芸術を取り扱う美術館。今回の特別展は、ケ・ブランリ美術館の創設に貢献したジャック・シラク元大統領がアジア文化、とりわけ日本文化にささげた情熱を記念する展示会だ。

今回話題を集めているのは、そんな特別展の展示品の一つである18世紀末の日本で製作された大癋見(おおべしみ)の能面。トゥルーズのジョルジュ・ラビ美術館の収蔵品であるこの能面、なんと展示の中心人物であるシラク元大統領にそっくりだというのだ。いったいどんな姿をしているのだろうか。さっそく問題の能面の実物を見てみよう。
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これは…
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似てる…?

ちなみにこの大癋見、コミック『るろうに剣心』などにも登場したのでご存知の方も多いと思うが、「尊大な態度で人々を威嚇する天狗」を表しているということで、シラク元大統領にとっては迷惑な話だ。

もっとも、フランス人が偉大な元大統領をからかうのには理由がある。ジャック・シラクが現役だったころ、「カナール+」局で「レ・ギニョル」というテレビ番組が放送されていた。「レ・ギニョル」とは「人形劇」という意味で、番組内容はあやつり人形を使って時の政治などを風刺するというもの。当時権勢を誇っていたシラク大統領は、番組中でも特に辛辣に風刺された人物だったのだ。
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コロナビールを愛飲する怠け者のキャラクターはフランス国民に大ウケ、結果的に大統領の「支持率」の向上に貢献した。今回、デフォルメされた特別展の能面を見て多くのフランス人がシラク元大統領を思い浮かべた背景に、この番組が貢献していることは疑い得ない。

ちなみに、シラク元大統領は実際にはコロナビールではなくラム酒のカクテルを愛好しているようで、筆者の知人もラムバーで飲んでいた所に元大統領が入ってきて店内が騒然とした逸話を話してくれた。退任後10年近く経った今なお人気を集めるシラク元大統領に、労働法の「改悪」騒動など国民の支持を失いつつあるオランド現大統領は大いに学ぶべきである。

photo: melty.fr, metronews.fr, voxe.fr, wikimedia.org