ロッテ・ライニガー
本日6月2日はドイツの影絵アニメーション作家ロッテ・ライニガーの誕生日。これを記念してGoogleトップページのロゴも「Doodle」仕様の特別アニメーションに変更されている。

このアニメーションはライニガーの影絵作品をモチーフにしたもの。黒をベースにしながらも色鮮やかな作風はNHKこどもにんぎょう劇場の「パンをふんだ娘」にも似ており、思わず見入ってしまう。ちなみにDoodle公式Webサイトによると、今日の特別ロゴは米国やヨーロッパ、オーストラリアなど一部の地域で見ることができる。

ロッテ・ライニガーと影絵アニメーション

影絵作家ロッテ・ライニガーの最高傑作は、1923年から1926年にかけて制作された世界初の長編アニメーション映画「アクメッド王子の冒険」(Die Abenteuer des Prinzen Achmed/The Adventures of Prince Achmed)とされている。「アラビアン・ナイト」に取材した物語で、アラブのイスラム世界を舞台にしている。以下にあらすじを引用しよう。
イスラムの都では、王様カリフの誕生祝の宴が行われていた。そこへ魔法使いがやってきて、空飛ぶ魔法の馬を披露する。王様はその馬が欲しくなるが、魔法使いは王女ディナルザデーを妻にめとることと引き換えにするという。兄のアクメッド王子は魔法使いの身の程知らずの非礼に怒るが、魔法使いによって馬に乗せられ天空の彼方に飛ばされてしまう。そこから、アクメッド王子の、世界を股にかけた大冒険が始まる! ワクワク島で美しい妖精パリバヌーと出会うが、彼女は中国の皇帝に囚われてしまう。一方、魔法使いはアラジンから魔法のランプを騙し取り、王子の妹ディナルザデー王女をさらっていた。王子は火の山の魔女の力を借り、アラジンとともに魔法使いに戦いを挑む。 
「アクメッド王子の冒険」の上映時間は65分。現在ではむしろ短い部類だが、当時としては長編、それも全編アニメーションとしては異例の長尺だった。ライニガーはこの作品をハサミによる手作業で制作した。その技法は東欧の伝統的な影絵劇にインスピレーションを受けているという。

ディズニーの有名な「白雪姫」が公開されたのは1937年。それに先行すること11年、ロッテ・ライニガーはまさにアニメーション映画の母と呼ぶべき人物なのである。

ロッテ・ライニガーの生涯

そんなロッテ・ライニガー(Lotte_Reiniger)は1899年6月2日、ドイツのベルリンに生まれた。幼いころから中国の影絵劇に興味を持っていたが、十代に入ると、ジョルジュ・メリエスやパウル・ヴェゲナーなどの手による当時誕生したばかりの映画作品に魅了されてゆく。

ロッテ・ライニガーが初めて監督としてメガホンを取った作品は1919年、「美しき魂の飾り」(Das Ornament des verliebten Herzens)である。以後、代表作「アクメッド王子の冒険」をはじめ、モーツァルトのオペラ「魔笛」に取材した1935年の「パパゲーノ」(Papageno)などの作品を立て続けて発表した。

ところが、その後ドイツではアドルフ・ヒトラーの率いるナチス等が台頭し、ライニガーは活動の制限を余儀なくされる。結果、彼女は夫のカール・コッホとともに外国へ亡命。1949年にロンドンに落ち着き、そこでも多くの作品を発表した。

ロッテ・ライニガーは1963年に夫を亡くしてから十年間ほど作品を発表することはなくなったが、晩年は後進の育成に専念し、1981年6月19日、西ドイツで亡くなった。82歳だった。



ロッテ・ライニガーの作品は現在も根強いファンが多く、日本でもたびたび上映会が行われている。また代表作「アクメッド王子の冒険」はDVD化もされているので、興味を持った方は手に取てみてはいかがだろうか。